はじめに
令和4年12月2日、令和4年度第2次補正予算が成立し、今後の中小企業に向けた補助金の内容が明らかになってきました。本補正予算では中小企業の賃上げやインボイス発行事業者への転換を条件に、補助金上限額や補助率を高くするなどの優遇策を設けています。今回は代表的な補助金制度と、その改正内容についてご紹介します。なお本記事は2023年2月末時点の情報に基づきますので、各制度の詳細は今後公表される公募要項等をご確認願います。
事業再構築補助金
新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、新分野展開や業態転換などの思い切った事業再構築に取り組む中小企業等を支援していきます。引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者への重点的支援を継続しつつ、ポストコロナ社会を見据えた未来社会を切り拓くための取組を重点的に支援するなど、大幅な改正が行われていますので注意が必要です。
〈主な改正点〉・・・次回第10回公募より適用予定
- 成長枠: 従来の「通常枠」に相当します。 ①コロナ以前より売上高が10%以上減少していること(売上高減少要件)が撤廃されましたが、②市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属すること、③事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること、との要件が追加されました。また補助率が2/3から1/2に変更されています。交付決定前に事業に着手できる事前着手承認制度が対象外となっている点にも注意が必要です。
- 物価高騰対策・回復再生応援枠: 従来の「回復・再生応援枠」と「緊急対策枠」とを統合し、コロナや物価高等により依然として業況が厳しい事業者を引き続き手厚く支援します。
- 産業構造転換枠: 国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を重点的に支援するよう新設されました。
- グリーン成長枠: 申請要件を緩和した類型「エントリー」が新設され、使い勝手が向上しました。
- サプライチェーン強靭化枠: 海外で製造する製品・部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靭化及び地域産業の活性化に資する取組を行う事業者を支援するよう新設されました(補助金上限額が5億円)。
- 大幅賃上げ・規模拡大のインセンティブ: 大幅な賃上げや中小企業からの卒業に取り組む場合、成長枠・グリーン成長枠においてさらなるインセンティブ(補助率・補助上限の引き上げ・加点)が与えられます。
- 一部申請類型における複数回採択: 過去に事業再構築補助金に採択された事業者であっても、グリーン成長・産業構造転換枠及びサプライチェーン強靭化枠について一定の条件下で2回目の再申請・採択が認められるようになりました。
申請枠 | 見直し等 | 対象 | 補助上限額(下限100万円) | 補助率 |
---|---|---|---|---|
最低賃金枠 | 継続 | 最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な事業者 | 500万円〜1,500万円*2 | 3/4 |
物価高騰対策・ 回復再生応援枠 | 見直し | コロナや物価高等により業況が厳しい事業者 | 1,000万円〜3,000万円*2 | 2/3〜3/4 |
産業構造転換枠 | 新設 | 国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者 | 2,000万円〜7,000万円*2 | 2/3 |
成長枠(旧通常枠) | 見直し | 成長分野への大胆な事業再構築に取り組む事業 | 2,000万円〜7,000万円*2 | 1/2*3 |
グリーン成長枠 | 見直し | グリーン成長分野*1の課題の解決に資する取組を行う事業者 | エントリー: 4,000万円〜8,000万円*2 スタンダード: 1億円 | 1/2*3 |
サプライチェーン 強靱化枠 | 新設 | 国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う事業者 | 5億円 | 1/2 |
*1 太陽光発電やバイオ燃料などカーボンニュートラルの達成にむけ今後成長が期待される14分野
*2 従業員規模により異なる
*3 大規模な賃上げを行う場合2/3
ものづくり補助金
革新的製品・サービスの開発又は生産プロセス等の改善に必要な設備投資等を支援します。また特に、大幅な賃上げに取り組む事業者へのインセンティブを強化するとともに、海外でのブランド確立などの取組への支援を強化します。
〈主な改正点〉・・・14次公募より適用
- 大幅賃上げ・規模拡大のインセンティブ: 大幅な賃上げに取り組む事業者に対し、下記枠の補助金上限額の100万円(従業員5人以下)、250万円(同6~20人)、1,000万円(同21人以上)がさらに上乗せされます(回復型賃上げ・雇用拡大枠などは除く)。
- グリーン枠: 温室効果ガス排出削減の取組段階に応じた3段階の支援類型を創設し、高度な取組を実施している場合、補助上限額が最大4,000万円に拡充されます。
- 海外展開支援の強化: 海外事業の拡大・強化等を目的とした設備・システム投資等を行う事業者を支援します。補助下限額を1,000万円から100万円に引き下げ、一部の類型ではブランディングやプロモーション等に要する費用が補助対象経費に追加されました。
- 認定器機・システム導入型の新設: 業種・業態に共通する生産性向上に係る課題を解決するため、認定を受けた設備・システムについて重点的に支援を行う類型が創設されます。今年度は、まず業種・業態に共通する課題を認定し、当該課題解決のための研究開発を促します。認定を受けた設備等への導入支援は、次年度以降実施予定です。
申請枠 | 補助上限額(下限100万円) | 補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 従業員5人以下: 750万円 6〜20人: 1,000万円 21人以上: 1,250万円 | 1/2、2/3(小規模事業者) |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 2/3 | |
デジタル枠 | 2/3 | |
グリーン枠 | エントリー:750万円〜1,250万円 スタンダード:1,000万円〜2,000万円 アドバンス:2,000万円〜4,000万円 | 2/3 |
グローバル市場開拓枠 | 3,000万円 | 1/2、2/3(小規模事業者) |
持続化補助金
小規模事業者が経営計画を作成して取り組む販路開拓等に加え、賃上げや事業規模の拡大(賃金引上げ枠、卒業枠)や創業や後継ぎ候補者の新たな取組(後継者支援枠、創業枠)といった環境変化に関する取組を支援します。
〈主な改正点〉・・・次回第12回公募より適用予定
- インボイス特例: 従来の「インボイス枠」にかわり、免税事業者からインボイス発行事業者に転換する事業者(インボイス転換事業者)を対象に、全ての枠で一律に50万円の補助上限を上乗せし、販路開拓を支援するようになります。これにより従来の「インボイス枠」は廃止されます。また従来のインボイス枠で採択された事業者はインボイス特例の対象外となりますので、ご注意ください。
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 | |
---|---|---|---|
インボイス転換事業者 | それ以外の事業者 | ||
通常枠 | 100万円 | 50万円 | 2/3 (賃金引上げ枠の一部の類型において赤字事業者は3/4) |
賃金引上げ枠 | 250万円 | 200万円 | |
卒業枠 | |||
後継者支援枠 | |||
創業枠 |
IT導入補助金
業務の効率化やDXの推進、セキュリティ対策のためのITツール等の導入費用を支援します。申請に当たっては、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請することが必要です。
〈主な改正点〉・・・次回公募より適用予定
- 通常枠: より安価なITツールの導入や、導入したITツールの継続活用を促進するために、補助下限額を5万円に引下げ、クラウド利用料の対象期間が2年間に延長されます。
- デジタル化基盤導入類型: インボイス対応に必要なITツール(会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト)導入を促進するため、クラウド利用料(2年分)、PC・レジ等のハード購入補助が引き続き実施されます。加えて、安価なITツール導入も可能とするため、補助下限額が撤廃されます(従来の補助下限値は5万円)。
申請枠 | 類型 | 補助額 | 補助率 | 対象経費 |
---|---|---|---|---|
通常枠 | A類型 | 5万円〜150万円未満 | 1/2以内 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、導入関連費 |
B類型 | 150万円〜450万円 | |||
セキュリティ 対策推進枠 | - | 5万円〜100万円 | 1/2以内 | サイバーセキュリティ利用料(最大2年分) |
デジタル化 基盤導入枠 | デジタル化基盤導入類型 | ITツール: 50万円以下 50万円超〜350万円 | 3/4以内 2/3以内 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、ハードウエア購入費、導入関連費 【複数社関連IT導入類型のみ】 上記に加え事務費、専門家費 |
PC等: 〜10万円 | 1/2以内 | |||
レジ等: 〜20万円 | 1/2以内 | |||
複数社連携IT導入類型 | (a)デジタル化基盤導入類型の対象経費 (b)(a)以外の経費⇒補助上限額:50万円×グループ構成員数、補助率は2/3(上限あり) |
中小企業相談所からのご支援
彦根商工会議所では、認定経営革新等支援機関として会員企業様に対して事業計画や申請書の作成を支援させていただきますので、お気軽にご相談ください。なお各補助金の情報は当所ホームページ等でも随時ご案内いたしますが、申請書類や申請方法、申請開始時期等の詳細は、各補助金事務局のホームページ等をご確認ください。