彦根商工会議所では、会員企業の景況や経営課題などを四半期ごとに調査する「彦根企業景況等調査」を実施しております。このほど第11四半期(令和5年10〜12月期)の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
本調査では、当所会員200社を対象に売上高、仕入・販売単価、従業員・資金繰り等について前年・前期比並びに来期見通しをDI(ディフュージョン・インデックス)値で示すとともに、自社の経営課題等も調査項目にしております。


調査方法:彦根商工会議所会員企業200社にメールまたはFAXによる
調査対象期間:令和5年10月~12月
集計・分析(委託先):中小企業診断士 中川 学 氏
回答企業数:124社(回答率62.0%)

建設業製造業卸小売業飲食業サービス業合計
回答数2324272030124
業種別比率18.6%19.3%21.8%16.1%24.2%100.0%

※本調査でのDI(ディフュージョン・インデックス)「増加(好転・上昇・過剰等)」と回答した企業数の構成比から、「減少(悪化・低下・不足等)」と回答した企業数の構成比を差し引いた値である。
※今期(前期比):令和5年7月~9月と比較した令和5年10月~12月の状況
※昨年比:令和4年10月~12月と比較した令和5年10月~12月の状況
※次期:令和5年10月~12月と比較した令和6年1月~3月の見通し

総括的概要

  • 市内企業全体の業況判断DI、売上高DI、採算DIのいずれもが不変又は好転であったのは1年6か月ぶり。ただし、建設業だけがいずれも悪化を示した。
  • 原材料価格等の上昇を販売価格に転嫁できている、または半分程度できているとした企業は、47.6%とほぼ半数に近づいている。
  • 従業員の確保難への対策として、54.0%の企業が賃金の引上げに取り組んでいる。
  • 国・県・市に対して経営の持続にかかる支援を求める声が51.6%と高い。

1. 全体の景況等

今期の「業況判断DI(好転-悪化)」は0と前回調査よりも9ポイントマイナス幅を縮小。「売上高DI(好転-悪化)」は13.7と2ポイントプラス幅を拡大し、「採算DI(好転-悪化)」は2.4と1年6か月ぶりに好転した。しかし次期は「業況判断DI」は▲11.3 、「売上高DI」は▲12.1 、「採算DI」は▲20.2といずれも大きく悪化に転じる見通し。
「仕入単価DI(上昇-低下)」は、前期比で51.6と9ポイント上昇幅が縮小。次期は46.8の見通し。「販売単価DI(上昇-低下)」は、前期比で23.4と8ポイント上昇幅が縮小。次期で24.2の見通し。原材料価格等の上昇を販売価格に「全て転嫁できている」又は「半分程度転嫁できている」とした事業者は、全体の47.6%と前年調査よりも5ポイント増加した。
「資金繰りDI(容易-困難)」は前期比で▲6.5、次期は▲8.9の見通し。「従業員DI(過剰-不足)」は前期比で▲14.5、次期は▲14.5と不足傾向が継続する見通し。従業員確保の為の待遇の改善として、「賃金の引き上げ」は54.0%と前年調査時より15ポイント増加。建設業以外の業種で過半数の事業者が取り組んだ。「有給休暇の取得促進」は33.1%、「時間外労働の削減」は32.3%であった。
既存顧客との関係強化対策として、「顧客情報の収集・管理」は41.1%と製造業、卸小売業、サービス業、建設業で多く、「商品・サービスの改良、改善、開発」は38.7%と飲食業、製造業、卸小売業で多く、「SNSを通じた情報発信」は35.5%と飲食業、サービス業で多かった。また、複数項目に取り組んでいた事業者が最も多いのは飲食業で55.0%、最も少ないのは建設業で17.4%であった。
国・県・市などへの施策について「経営の持続にかかる支援」を要望する意見が51.6%と前年調査時よりも12ポイント減少したものの全業種に共通して高かった。他の施策も前年調査時よりも減少する中で「事業承継にかかる支援」は18.5%と4ポイント増加した。

2. 業種別の景況等

建設業

仕入単価の上昇が継続し、売上高、業況、採算がともに悪化。対応策が販売価格への転嫁、仕入先の検討から生産性向上、在庫調整といった、利益を上げる仕組みへの変換が図られている。
今期の「業況判断DI」は▲30.4と前回調査よりも7ポイントマイナス幅を拡大、「売上高DI」は▲34.8と17ポイントマイナス幅を拡大、「採算DI」は▲39.1と4ポイントマイナス幅を拡大。前期よりも大きく悪化を示した。次期は、「業況判断DI」は▲30.4、「売上高DI」は▲39.1、「採算DI」は▲43.5と依然として悪化の見通し。
「仕入単価DI」は前期比で34.8と42ポイントプラス幅を縮小し、次期も34.8と上昇は継続するものの沈静化してきている。「販売単価DI」は前期比で4.3と19ポイントプラス幅を縮小、次期は4.3。原材料価格等の上昇を販売価格に「全て転嫁できている」は13.0%と前年調査時よりも9ポイント増加、「半分程度転嫁できている」は39.1%と3ポイント増加。「あまり転嫁できていない」又は「転嫁できていない」は47.8%と9ポイント減少としており、少しずつ転嫁が進んでいる。
「資金繰りDI」は前期比で▲17.4と前回調査よりも6ポイントマイナス幅が縮小し、次期は▲17.4。「従業員DI」は前期比で▲26.1と20ポイントマイナス幅を拡大。前回調査では全業種中最も不足が少なかったが、今回もっとも不足が多くなった。次期も▲30.4と不足が継続する見込み。しかし、従業員確保の為の待遇の改善は、「取り組んでいない」が52.2%と前年調査時より6ポイント増加し過半数を超えた。「時間外労働の削減」は30.4%、「賃金の引き上げ」は21.7%。厳しい業況のため従業員確保したくとも賃金の引き上げが実施できない状況がうかがえる。
既存顧客との関係強化対策として、「顧客情報の収集・管理」は39.1%。「取り組んでいない」は39.1%と11ポイント減少したものの全業種中最も多かった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が47.8%、「雇用対策にかかる支援」が34.8%であった。

製造業

業況判断、売上高、採算のいずれもが好転。原材料費等の販売価格転嫁について約6割の事業者が半分程度以上転嫁できている。既存顧客との関係強化のために約6割の事業者が顧客情報の収集・管理に取り組んでいる。
今期の「業況判断DI」は8.3と1年ぶりに好転。「売上高DI」は20.8と前回調査よりも9ポイントプラス幅を拡大。「採算DI」は16.7と2年ぶりに好転。次期は昨年同期よりは好転するものの今四半期が良かったために「業況判断DI」は▲4.2、「売上高DI」は▲12.5、「採算DI」は▲25.0と不安な見通し。
「仕入単価DI」は前期比45.8、次期45.8と上昇が継続している。「販売単価DI」は前期比29.2、次期16.7。原材料価格等の上昇を販売価格に「全て転嫁できている」は16.7%、「半分程度転嫁できている」は41.7%。「あまり転嫁できていない」又は「転嫁できていない」は41.7%と前年調査時よりも4ポイント減少しており、転嫁が浸透してきている。
「資金繰りDI」は前期比0.0、次期4.2とほぼ不変。「従業員DI」は前期比▲8.3、次期▲8.3であった。従業員確保の為の待遇の改善は、「賃金の引上げ」が62.5%と前年調査時よりも24ポイント増加し過半数の事業者が取り組んでいる。前年調査時に取り組みが多かった「有給休暇の取得促進」は37.5%と13ポイント減少した。
既存顧客との関係強化対策として、「顧客情報の収集・管理」58.3%と過半数の事業者が取り組んでいる。他に「商品・サービスの改良、改善、開発」41.7%であった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が50.0%、「雇用対策にかかる支援」が37.5%であった。

卸小売業

業況判断は調査開始以後初めて悪化を脱し、売上高、採算はいずれもが好転。国等へ事業承継にかかる支援を求める要望が約4割と全業種中最も多かった。
今期の「業況判断DI」は0.0と調査開始以後初めて悪化を脱した。「売上高DI」は25.9と大きく好転。「採算DI」も14.8と大きく好転した。次期は「業況判断DI」が▲7.4、「売上高DI」は▲11.1。「採算DI」は▲7.4とやや不安な見通し。
「仕入単価DI」は前期比で55.6、次期で37.0と上昇傾向が続く見通し。「販売単価DI」は前期比で37.0、次期で40.7と上昇が継続。原材料価格等の上昇を販売価格に「全て転換できている」が14.8%と前年調査時よりも3ポイント減少、「半分程度転嫁できている」は33.3%と6ポイント減少。「あまり転嫁できていない」又は「転嫁できていない」は51.8%と転嫁が停滞している。
「資金繰りDI」は前期比▲3.7、次期は▲7.4。「従業員DI」は前期比▲14.8、次期は▲7.4の見通し。従業員確保の為の待遇の改善は、「賃金の引き上げ」が51.9%と過半数の事業者が取り組んでいる。「有給休暇の取得促進」48.1%、「時間外労働の削減」44.4%にも多くの事業者が取り組んでいる。
既存顧客との関係強化対策として、「顧客情報の収集・管理」に44.4%、「商品・サービスの改良、改善、開発」に40.7%、「SNSを通じた情報発信」に33.3%であった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が48.1%。「事業承継にかかる支援」は37.0%と前年調査時より11ポイント増加し全業種中最も多かった。

飲食業

業況判断、売上高、採算のいずれもが全業種中最も好転。ただし資金繰りは最も困難。SNSを通じた情報発信に7割、商品・サービスの改良、改善、開発に6割の事業者が取り組んでおり、いずれも全業種中最も多かった。
今期の「業況判断DI」は25.0と前回調査よりも13ポイントプラス幅を拡大、「売上高DI」は30.0とプラス幅を26ポイント縮小したものの、「採算DI」は20.0と大きく好転した。次期は、「業況判断DI」が▲5.0、「売上高DI」は▲5.0、「採算DI」は▲20.0と不安な見通し。
「仕入単価DI」が前期比で90.0、次期で85.0と上昇が継続、「販売単価DI」は前期比で25.0、次期で35.0の見通し。原材料価格等の上昇を販売価格に全て転嫁できている」は10.0%と前年調査時より1ポイント増加、「半分程度転嫁できている」は35.0%と9ポイント増加。「転嫁できていない」又は「あまり転嫁できていない」は55.0%と10ポイント減少し転嫁が進んでいる。
「資金繰りDI」は前期比では▲25.0と前回調査よりもマイナス幅を6ポイント拡大。次期は▲30.0と今期よりさらに厳しくなる見通し。「従業員DI」は前期比で▲15.0と4ポイントマイナス幅を縮小した。次期で▲20.0と不足傾向が継続する見通し。従業員確保の為の待遇の改善は、「賃金の引き上げ」65.0%と前年調査時よりも9ポイント増加、「時間外労働の削減」20.0%と24ポイント減少した。
既存顧客との関係強化対策として、「SNSを通じた情報発信」に70.0%取り組んでおり22ポイント増加し、多くの事業者でSNSを活用していることがうかがえる。「商品・サービスの改良、改善、開発」は60.0%であった。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が60.0%。他の施策については20%以下であった。

サービス業

売上高は好転も、業況、採算は不変。2年間続いた好転が沈静化の見通し。国等へ雇用対策、人材育成にかかる支援を求める要望が全業種中最も多かった。
今期の「業況判断DI」は0.0と不変。「売上高DI」は23.3と前回調査よりも5ポイントプラス幅を拡大、「採算DI」は0.0と不変。次期は「売上高DI」が3.3とやや好転の見通しも、「業況判断DI」が▲10.0、「採算DI」が▲10.0と2年ぶりに悪化の見通しとなった。
「仕入単価DI」は前期比で40.0、次期で40.0と上昇が継続。「販売単価DI」は前期比で20.0、次期は23.3。原材料価格上昇を販売価格に「全て転嫁できている」は6.7%と前年調査時より5ポイント減少したものの、「半分程度転嫁できている」は30.0%と11ポイント増加。「あまり転嫁できていない」又は「転嫁できていない」は63.3%と7ポイント減少し転嫁が少しずつ進展している。
「資金繰りDI」は前期比で6.7、次期で0.0。「従業員DI」は前期比で▲10.0と前回調査よりも9ポイントマイナス幅を縮小、次期は▲10.0とやや不足する見通し。従業員確保の為の待遇の改善は、「賃金の引き上げ」に66.7%と前年調査時よりも22ポイント増加し過半数を超える事業者が取り組んだ。「有給休暇の取得促進」に43.3%、「時間外労働の削減」に33.3%の事業者が取り組んでいる。
既存顧客との関係強化対策として、「SNSを通じた情報発信」は43.3%、「顧客情報の収集・管理」も43.3%あった。「商品・サービスの改良、改善、開発」は36.7%と26ポイント減少した。
国・県・市などに求める施策は「経営の持続にかかる支援」が53.3%。「雇用対策にかかる支援」が50.0%、「人材育成にかかる支援」が36.7%と前年調査時と変わらず人材にかかる支援要望が多かった。