今年も1年の半分を過ぎ、あっという間に月日が過ぎておりますが、経営者の皆さまいかがお過ごしでしょうか。
「事業承継・引継ぎ」という言葉を聞かれても、まだまだ先のことだとか、ご家族が継いでくれる筈だとご自身だけで決めつけていませんか。世の中では人との巡り合わせでいろんな可能性が生まれています。
今回は、地域の伝統野菜を使った商品づくりをされていた経営者がご家庭の事情で継続困難となり、身近におられた第三者に事業承継された事例をご紹介いたします。

滋賀県内の事業承継事例紹介

後継者 釘田和加子さん

地域の宝物 弥平とうがらしと創業者の思いを未来へつなぐ
株式会社 fm craic(エフエム クラック)

業種:弥平とうがらしの加工品製造及び販売
所在地:滋賀県湖南市石部中央6-1-53

湖南市の伝統野菜”弥平とうがらし”を使ったスパイスやソースなど、「ぴりり」シリーズを製造販売する株式会社fm craic。創業者の三峰教代さんと佐々木由珠さんが2011年に立ち上げました。
この事業を引継いだ釘田和加子さんは、現在子育てと事業を両立しながら、弥平とうがらしの知名度を上げるための取り組みや新商品の開発に取り組んでいます。

引継ぎの経緯について教えてください

湖南市の地域おこし協力隊として活動していた時に佐々木さんと知り合い、出産を控えていた佐々木さんの手助けをするようになったのがきっかけです。
その後、佐々木さんがご主人の転勤で滋賀を離れることになり、代表として事業を引継いでもらえないかという打診を受けました。いろいろ悩みましたが、伝統野菜を使った製品がなくなってしまうのはもったいないと、事業を引き受けることを決意しました。承諾はしたものの、会社組織になっている事業をどのように引継げばいいのかわからず、いろいろ検索して事業承継・引継ぎ支援センターがあることを知り、相談することにしました。

創業者の佐々木さん(左)と三峰さん(右)

支援センターでどのようなサポートを受けましたか?

後継者である私と創業者のお二人、支援員の方の三者で、事業の引継ぎの進め方についてお話しする機会があり、株式の譲渡や契約書の締結など、手続きの面も詳しく教えてもらいました。経営は初めてでわからないことが多く、一人でやっていけるのかとても不安でしたが、サポートしていただいたことで不安が軽減できました。

伝統野菜 ”弥平とうがらし”

そして、2021年に事業を引継がれたのですね

最初の1年は経営も手探りで、引継ぎを機に「ぴりり」シリーズのロゴやパッケージのデザインを一新したほか、SNSで使い方を提案したりと、慌ただしく過ぎていきました。
私自身、中学時代からインドに関心を持ち、JICAのスタッフとしてインド事務所のNGOデスクで仕事をしていたことがあるので、その経験を活かして弥平とうがらしを使った新商品『チキンビリヤニ(インドの炊き込みご飯)』の開発・発売にも取り組みました。

「ぴりり」シリーズのスパイスとソース

キットで作れるチキンビリヤニ

仕事と子育ての両立はいかがですか?

会社を引継いだ翌年に出産したのですが、出産のタイミングが収穫期に重なったため、関東に転居された佐々木さんに手伝いに来ていただきました。子育てをしながらなのでフルタイムで仕事をすることが難しく、なんとももどかしいところがありますが、パートの方に手伝っていただきながら会社を運営しています。

今後の目標についてお聞かせください

辛さの中に旨味がある弥平とうがらしですが、実は私も地域おこし協力隊になるまで知らなかったし、残念ながら地元湖南市でもまだそれほど知名度は高くないと思います。
県外の人に知ってもらうことも大切ですが、もっと滋賀県民、湖南市民に知ってもらえるような取り組みをしていきたいと思っています。これまでにも地元の中学校で職業講話を行い、弥平とうがらしの紹介やインドでの経験が今の仕事につながっていることをお話ししたり、商品の出荷体験をしてもらったりしています。


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