彦根で古くから愛されてきた盤上ゲームカロム。現在、日本選手権大会の公式盤“彦根カロム”を唯一製作するのは奥居仏具(株)の「OLD and NEW」です。奥居謙太代表取締役社長にお話を伺いました。

奥居仏具(株)は昭和20年、終戦の年に創業、来年80周年を迎える。宗教用具、仏具製造を手がけ、卸売業に徹する企業である。特に、位牌は国内生産の50%を占め、オーダーメイドの位牌や寺院用位牌の製作も強みとなっている。
4代目 奥居謙太さんは社長に就任して4年、創業者である祖父の影響も未だ大きいが、先代の父、雅彦さん(現顧問)の経営改革が会社にとって大きな転機となり業績を伸ばしていった。
「祖父が創業し、父が守ってきた会社を、時代に合わせながら、社員にも社会にも地域にも貢献できる会社に変えていきたい。従業員の負担軽減や若手採用など、社内の課題をクリアにし、さらに効率化を図っていきます」と謙太さんは、手仕事でしかできないアナログとデジタルの最適化に着手。確実に成果もあがっている。

彦根カロムの始まり

1988年8月28日、「第1回カロム日本選手権大会」が、彦根市で行われた。主催は彦根青年会議所(以下、彦根JC)。大会はダブルスのみの対戦で、92チームの参加があった。カロムはこのとき「彦根カロム」として全国デビューを果たす。
ルールの統一や普及活動を行い大会開催にむけて準備をしていくなか、大きな問題はカロム盤だった。大会公式盤をどうするか………。
大正時代から彦根で唯一カロムの製造販売を続けていた㈲中野木工所のアドバイスを受けながら、新たなカロム盤を彦根JCメンバーで製造することになった。
当時、メンバーだった雅彦さんは、「巧房 OLD&NEW」(現 OLD and NEW)を設立し、カロム盤の安定した供給を実現した。以降、カロムの売り上げの2割程を普及活動費にあて、現在も日本カロム協会に還元し、支え続けている。

ルワンダに届いた「彦根カロム」

彦根カロムがつなぐ輪をこれからも大切に

近年、再びアナログゲームが注目されている。謙太さんは仲間と共に、展示会やイベントに参加するようになった。今年3月には、インテックス大阪で開催された、西日本最大級のボードゲームイベント「BGBE Japan」に出展した。また、これまでに被災地の復興支援や、発展途上国へ彦根カロムを無償で提供するなど、国境や言語、年齢の垣根を越えて色々な人々を笑顔にしている。
カロム盤の製造は薄利で商売につながるものではない。「父は〝いつまでこれせなあかんのか……〟と言いますが、これからも製造販売は続けていきます。もちろん、優先順位は考えてます」と謙太さん。
愛される彦根カロムを守り、共に活躍する同社を地域で応援していきたい。

(編集部)