前回紹介した藤塚時計店をはじめ、地元の人は「生活用品なら釘平さんに行けば何でも揃う」と口を揃える。江戸時代から今も変わらずこの地で営業を続ける9代目店主宮下さん夫妻に話を伺った。(写真:泰彦さん、きぬ代さん)

金物小売業は江戸時代から続く釘の製造・販売を起源とし、農工具・鍋・釜、現代では業務用厨房品・調理器具・製菓用品・竹製品など時代とともに広がりを見せてきた。
釘平金物店の創業は250年前安永時代(江戸時代中期)。父の代で生活用品の販売を始めた。 「当時は大阪で買い付けてきた商品を汽車まで取りに行ったりしたものです」。泰彦さんの子ども時代の思い出である。
店内には色々な釘から包丁・刃物・工具や掃除用具のほか、業務用の大鍋まで確かな目利きで商品を取り揃えている。先日も良い鍋を求めて県外から買いに来られたという。
地元のお客さんからも頼りにされていて、質の良いものがお得に手に入ると評判は上々だ。

昭和38年釘平金物店(写真:シブヤ写真館 / 提供:彦根市文化財課所蔵)

9代目が始めた鍵屋の事業

世の中の需要も相まって、50年ほど前に泰彦さんが独学で始めたのが合鍵の作製。2000を超える鍵のベースから専用の機械を駆使し、熟練の技で刻みを調整していく。何とかできないかと相談に来るお客さんは後を絶たない。
「鍵も商品の目利きも、一朝一夕ではどうにもなりません。これまでの経験が今に活きています。日々心掛けているのが、やる気。お客さんに喜んでもらう!という気持ち、それが一番なんです」と泰彦さん。

学校や企業へ用具の納品、顧客宅への配達も行う。取材時もポストの配達・取付の約束をして常連さんが笑顔で帰っていった。

これからもこの地で

「商店街が賑やかだった頃は、フラッと立ち寄る方もおられたんですが、今は、目的があってこの店に来られる人が多いです。大切なのは地域で経済が回っていくこと。お父さんも私もまだまだ元気やし、この店が無くなれば困る人もいる。頑張って続けていかないとね」ときぬ代さん。
近年はコロナ禍の巣ごもり需要で、たい焼き器や蒸篭などの調理用具を求めて訪れるお客さんや、中華鍋や寸胴鍋などがお得に手に入る、と業務用に購入していく事業者の方も増えているそうだ。

同店をはじめとした金物小売業は、プロの職人から一般客まで幅広い顧客ニーズに応えながら「モノづくり」を支え、人々の生活基盤を支える重要な役割を担う業界である。ニーズに応える目利きは、地域の人々によって育まれる。釘平金物店の250年の歳月は、「目利きとやる気」の結果だろう。


取り扱い商品を紹介

釘平金物店おすすめ! 各地方の包丁を取り扱っています!

切れ味抜群!京都の伝統工芸品を使った釘平オリジナル包丁

昔懐かしいレトロなデザインのカレースプーンやティースプーン、マドラーなど、既に販売が終了してしまった掘り出しものもあるかも?