サンライズ出版は岩根順子社長の父豊秀さんが昭和5年(1930)に創業した謄写版(ガリ版)工房 「サンライズスタヂオ」から始まる。中山道鳥居本宿の合羽所「木綿屋」の裏庭の小屋を改造したアトリエだった。昭和13年(1938)彦根市芹橋9丁目に工房を移転。豊秀さんは地域の文化活動に熱心で、工房はいつも人が集いサロンのようだったという。常に口にしていたのは「少しでも喜んでいただけるために精一杯の仕事をする」こと。その執着は、順子さん、専務の治美さんに、「サンライズの精神」として受け継がれている。

印刷業から地域出版社へ

昭和56年(1981)、豊秀さんが亡くなり、順子さんは社長に就任。翌年、サンライズ印刷㈱が誕生する。妹である専務の治美さんや社員たちに支えられながら、印刷業から出版社へ、時代の変化を乗り越えていくことになる。
昭和51年(1976)自費出版の受注への取り組みを始めていたが、転機となったのは、民俗学者・橋本鉄男氏からの「近江の歴史を掘り起こす本を作りなさい」という言葉だった。この言葉を胸に、地域文化を掘り下げる『淡海文庫』を創刊。現在76冊を数える。
「広く浅く」ではなく「狭く深く」を掲げ、専門家を巻き込んだ独自の出版スタイルを築いていった。その代表例が『12歳から学ぶ 滋賀県の歴史』である。中学校教員の提案を基に制作したもので、教科書では触れられない滋賀の歴史を子どもにわかりやすく伝える教材として評価された。他県からの観光客にも人気のロングセラーとなり、地域出版の可能性を大きく示す一冊となった。
サンライズ出版(株)への社名変更は平成15年(2003)のことである。

本と人をつなぐ取り組み

デジタル化の波によって現代人の活字離れに直面している今、同社は「本と出会う場」を創出する活動に注力している。県の委託で企画・運営する「滋賀まるごと 読書フェア」では、人気作家の講演や「豆本ガチャ」などを展開し、子どもたちに本の魅力を伝え読書の機会を創出するイベントを展開中。
さらに、滋賀のあらゆる文化を発信する拠点として2027年開館を目指す「琵琶湖文化館」との関わりをどのようにしていくかも次の大きな課題だという。
デジタル展示が主流となる時代だからこそ、地域の歴史や研究成果を「活字文化」として残す意義は大きい。もちろん紙媒体に固執するつもりはなく、制作したコンテンツをデジタルでどう展開し二次利用につなげるかも課題としている。
「地域の本なら何でもいいわけではない。地域に立地する出版社ならではの本をつくりたい」と順子さんは話す。
社長と専務が貫いてきた地域に密着した出版の根底には「地域文化への敬意」と「伝えたい」という情熱がある。一冊の本に込められた地域の物語は、デジタル時代だからこそ、時を超えて人々の心に届き、誇りを育んでくれるに違いない。
そして、地域出版社が彦根に存在することを感謝したいと思う。